あた〜らしい春が来た♪
 

「新婚さんバトン?」


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F 旦那様が出勤して家で一人です。どうしますか? (続き)

寒い日の方が多いような気がする、今年の弥生三月となってしまい。
そんな中、
以前からもちょくちょく助っ人にと請われては、バイトに馳せ参じていた雑貨屋さんへ、
短期ながらお手伝いをしに行くこととなったイエスであり。
常勤の店員さんが来られないという非常事態からの依頼なので
いつもの“午後からのゆっくりモード”ではなく
朝一番から入ってほしいとの要請だというものの、
それでも開店準備や何やには慣れもないので免除されての部長出勤。
行ってきますvvのキッスも残してという、
余裕のお出掛けとなったイエスなのを見送ってのさて。

 “ネタと言ってもなあ。”

不意な原稿依頼が飛び込んで来ても困らぬように、
日頃からも結構メモを取ることはあるけれど。
本当に切羽詰ってでもない限り、
四角く座ってて練れたり出たりするものじゃあないのも
経験上ようよう知っているブッダ様。
それでも一応は、ノートを前に唸ってみたものの、
こめかみをつついても出ないものは出ないようで。
ひとしきり う〜んう〜んと考えあぐねて、
ふっと何かの糸口もどきが掠めるものの、さしたる形を成さぬ物だったか、
メモをしかけて、だがだが途中でぐるぐると塗りつぶしておしまいとなる始末。

 “そも、こんな風にして練ったものより、
  何でもないことから思いついたものの方が面白かったりするものねぇ。”

伏線や布石を張っておいて、そこへオチを持ってくるとか、
そういう構成や段取りが全く必要ないとは言わないけれど、
それでもやっぱり今日のところはネタを練るよな気分にはなれないようで。
こたつの天板の上に開いていたノートをぱたりと閉じてしまうと、

 「…しょうがないか。」

イエスがいないとそのまますっかり手持ち無沙汰になるという身でなし、
キッチン周りのお掃除でもしようか、
それとも電灯の笠を下ろして解体掃除でもしようかななんて、
家事にまつわる御用だったらいくらでも思いつける勤勉なお人。

 「よぉし♪」

気持ちを切り替え、腕まくりしつつ立ち上がったブッダ様。
そのまま室内を見まわすと、
さあどこから手掛けましょうかと不敵な笑みを浮かべてみたりしたのであった。

  さすがは主夫の鑑でございます。(おいおい)



     ◇◇


特別に早く出て来てほしいと言われていたのが初日から数日ほど。
お母様に難儀のあったお姉さんが、何とか通常勤務で出てこられるようになったらば、
いつものようにお昼過ぎからというモードに戻してもらえるらしく。

 「あー、イエスさんが居るvv」
 「こらこら、人を指差しちゃあいけない。」

そろそろ春休みへ突入という頃合いだろうに、
それでも部活があってか学校へ出てくる高校生は少なくはなく。
公立私立取り交ぜて沿線にいくつかある高校それぞれへ通う顔ぶれが、
それぞれなりの御用があってか、午前中だというに商店街へ繰り出すこともあるらしく。
遅いめの登校途中でお昼ごはんの買い出しに立ち寄ったとか、
卒業式の後の 先輩を送り出す予餞会の準備にと、作業用の文房具を買いに来たとか、
そういった顔ぶれが、ひょいと覗いた雑貨屋さんの店内に見覚えのあるお顔を見つけて、
あらまあと立ち寄ってくれるところが、
正しく“客寄せパンダ”の本領発揮と言いますか。(こらこら)

 「さやかちゃんも奈津美ちゃんも、今日は学校かい?」
 「うん。」
 「先輩方が大学受かったっていうお祝いをするのvv」

皆で相談して贈り物も決めて、ワイワイ言いつつラッピングして。
発注した花束を取りに行ったり、
ケーキやクッキーやジュースなんかを買い出したり、今日は忙しいんだよなんて。
その割にそれをお喋りする暇はあるらしく。
丁度イエスが説明をされてたコーナーに、愛らしい封筒付きのカードを見つけると、

 「あ、これつけようか?」
 「そうだね。まだ時間あるし寄せ書き風にしてvv」

そんな風に意見も合ってのこと、
5人いるという先輩方それぞれへのメッセージカードを選び始める彼女らで。
そうかと思や、

 「あ、イエスさんだ。」
 「やっぱりvv」

予感があったような言いようをして入って来た、
別の学校の子たちらしい制服違いのお嬢さんたちが、
買うつもりらしきマスキングテープを幾つか手にして寄って来て、

 「ねえねえ、どれがいいか選んでよ。」
 「私がかい?」

キョトンとして訊いてみれば、

 「そう。」
 「だってイエスさんて、なんか験が良いっていうか縁起が良いっていうか。」

あっけらかんと応じたものの、これでは話がまだよく見えない。
そんな彼女らの後から、

 「それだけじゃあ、イエスさんも何のことやら判らないってば。」

そうと正すよな言いようが掛けられて。
聞き覚えのある声だと、お顔をそちらへ向ければ、

 「あ、一子ちゃん。」
 「イエスさんたら、相変わらず名前の方で把握してるんですね。」

そうと言いつつ、まんざらでもなさそうに、目許をたわめて含羞むお嬢さんは、
やはりイエスの知己である、宇都木さんチの一子ちゃんという女子高生。
手入れの良いさらさらの髪を白い頬へすべらせるよにして、
ぺこりと頭を下げてから、

 「斉唱部の先輩たちへ、寄せ書きの色紙を書くんですけど、
  それを飾るのにこのテープを使おうってことになったんです。」

どうやら“帰宅部”ではなくなったらしい一子さんは、
所属している部の先輩方へ贈る色紙への支度をする係を割り振られているらしく。

 「それであのあの、
  イエスさんとブッダさんて、
  触れたものとかくださったものとか物凄く縁起が良いって評判なんですよ。」

 「…おや。」

いつぞや頑張ってお嬢さんたちと一緒に焼いたカップケーキのみならず、
他でも奇跡の恩恵がこそりと働いていたようで。

 「擦りむいた膝へ絆創膏を貼ってもらったら
  計測会でベストの記録が出せたとか、
  かじかんでた手を可哀想にって握ってもらった子が、
  その手をこっそり片思いしてた人から取ってもらえて両想いになれたとか。」

どれがどっちの所業かはもはやごちゃ混ぜらしいが、

 “そのくらいならどっちだってやってるなぁ。”

わあ冷たいねぇと手を取るくらいならブッダにも怒られないしと、
そんな風に思い出して…、

 “それはそれで、ちょっと寂しいこともないこたないんだけれど。////////”

焼きもち焼いちゃうブッダもなんか可愛いんだもんvvと、
そのまま やに下がってたら世話はない。(笑)


 「よぉし判った。
  それじゃあようよう気持ちを込めて選んで差し上げましょうvv」

縁起物扱いは別に構わぬか、機嫌がよくなった勢いごと、
とびっきりの笑顔となってお嬢さんたちへの接客に勤しむ神の子さま。
これはこの春も 縁起の良いご町内であること請け合いかもですねぇvv





  もちょっと続く。(笑)



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  *イエス様の側のご様子も公平に書いてみました。
   それにしても、バトンネタにしては長い。(笑)
   ううう、気長にお付き合いくださると嬉しいです。

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